フレイルと尿失禁

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大阪は今日から緊急事態措置が実施されました。5月11日までの約17日間は不要不急の外出を控えるよう要請されています。以前のブログにも書きましたが尿失禁がある方は自粛期間中に悪化しないように注意が必要です。とくに高齢者はサルコペニア(加齢に伴う筋量・筋力低下)を来しやすく、またサルコペニアはフレイルの原因となります。今回はフレイルと尿失禁との関係についてお話したいと思います。
フレイルとは加齢に伴う予備能力低下のためストレスに対する回復力が低下した状態で要介護状態に至る前段階と位置付けられ要介護状態とは区別されます。また身体的な機能低下だけでなく精神的や心理的、社会的な脆弱性を呈しやすい状態でもあります。多くの高齢者がフレイルを経て要介護状態に陥り、自立障害や死亡を含む健康障害に至ります。
海外における80歳以上の高齢者を対象にしたフレイルと尿失禁に関する研究ではフレイル群と非フレイル群での入院前の尿失禁有病率は64.8%vs30.5%(P<0.01),また入院前に尿失禁が無いフレイル群と非フレイル群でも1年後の尿失禁有病率は56.8%vs33.3%(P<0.01)でした。これはフレイル自体が独立した尿失禁の予後因子であることを示唆しています。
高齢者になれば高血圧や糖尿病などの生活習慣病だけでなく悪性疾患や心疾患にも罹患しやすくなります。それらの治療中や治療後に尿失禁を始めとする尿路症状を来すことは大いにあり得ます。いっぽうで男女ともに加齢により膀胱容量の低下や不随意収縮の出現、膀胱収縮機能の低下などを引き起こしますし、男性は前立腺疾患、女性は骨盤臓器脱なども認めるようになります。これらを適切に評価し早期に治療を介入することで仮にフレイルの状態であったとしても要介護状態に至るリスクを減らし健康寿命の延伸につなげていくことが大事です。

新型コロナウイルスによってもたらされたニューノーマルな日常も1年以上が過ぎました。しかしながらまだ新しい変異株の報告が入ってきており、今回の自粛で感染拡大が収まってくれることを期待したいですね。

本日は以上です。

参考文献;
野宮正範,吉田正貴ほか:フレイル要因としての加齢による下部尿路機能の変化;日排尿会誌.29(2),2018,349-52
Chong,E.et al.:Frailty Predicts Incident Urinary Incontinence Among Hospitalized Older Adults-A 1year Prospective Cohort Study.J Am Med Dir Assoc. 19(5),2018,422-7