よくある疾患 -膀胱炎①-
女性にとって泌尿器科受診のきっかけとなる代表的な疾患です。
約半数の女性が生涯に一度は尿路感染(多くは膀胱炎)に罹患し、そのうちの4人に1人が半年以内に再発すると言われています。
基本的に膀胱内は細菌が存在しない無菌の状態です。ただ排尿の出口(外尿道口)付近の尿道には少数の菌が存在しています。女性の尿道は4cm程度と短く直線的で、尿道口が膣や肛門に近いことから容易に細菌やウイルスなどが膀胱に侵入しやすい構造になっています。
発症頻度は性活動が始まる20歳前後から増加します。
妊娠中は子宮が増大してくる妊娠中期以降に認めやすくなります。これは妊娠中は膀胱粘膜が浮腫状になり、子宮が増大し膀胱を圧迫するようになると尿流の停滞を来すためです。膀胱は機能的に低緊張となり残尿が出現することが主な原因です。
閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)が低下することで膣や外陰部の微生物環境が変化し排尿の出口(外尿道口)付近に大腸菌が増加します。また尿道括約筋力も低下するため細菌の逆行性感染を来しやすくなります。
ただ、細菌などが膀胱に侵入したらすぐに膀胱炎が発症するわけではありません。それは膀胱粘膜は菌の定着に対するさまざまな防衛機構を持っているからです。具体的には、尿の物理的・化学的性状(浸透圧、PH、有機酸)、尿路粘膜の殺菌作用、細菌の付着に対する抵抗性や免疫機構などが存在します。これらの防衛機構が破綻すると膀胱炎になるわけです。
次回は膀胱炎の発症機序について説明します。