新型コロナウイルスによる精液への影響

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さて今回は新型コロナウイルス感染が精巣にどのような影響を及ぼすのかを過去の報告を取り上げて解説します。

新型コロナウイルスはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という細胞受容体を通じて細胞内に侵入します。ACE2受容体は肺、心臓、口腔、腎臓、精巣などに発現しており、ウイルスが体内に侵入すると、これらの組織や臓器が影響を受けるリスクがあります。

2020年1月-2月に中国河南省の商岡市立病院で行われた報告では、新型コロナウイルス感染者38人の精液を検査しました。38人の内訳は急性期(症状出現期)が15人で回復期が23人でした。精液のPCR検査を実施したところ、急性期の15人中4人が、回復期の23人中2人が陽性(ウイルスの残骸が見つかった)と診断されました。

またドイツの研究チームが2021年1月に発表した報告では、新型コロナに感染した男性84例と、同年代の健康な男性105例の精液を60日間わたって10日ごとに分析したところ、感染者は健康人と比較して、精子に悪影響を及ぼす炎症や酸化ストレスを示す数値が著しく高く、その影響は採取開始から60日後まで続いており長期に続く可能性が示唆されました。

ほかにも新型コロナウイルス感染で亡くなった男性患者の剖検(死亡後の病理組織検査)では精巣にウイルスの感染像を認め精子形成障害を呈していたことや感染の重症度が高くなるにつれ精子形成異常を認めたという報告があります。

これらの結果を踏まえれば新型コロナウイルス感染は一定の確率で精巣機能障害を引き起こすと思われます。また精液から生きたウイルスが検出されておらず精液を介しての感染は明らかにはなっていません。

高齢者はもとより現在感染の主流になっている変異株は若年層でも重症化するケースが稀ではないため、なるべく早く年齢制限を撤廃したワクチン接種が待たれます。

本日は以上です。

 

【参考文献/URL】

①https://academic.oup.com/humrep/article/36/6/1520/6125160

②https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210523-00239323/