夜間頻尿
ブログ2回目の内容は泌尿器科に受診される代表的な症状である夜間頻尿について取り上げます。
「以前は夜中にトイレに行かなかったのに気づいたら2回、3回行くようになった。」
このように受診される方は非常に多くおられます。事実、夜間睡眠中に2回以上トイレに行く割合は50歳代が15-20%、60歳代は30-40%、70歳代では50-60%と年齢とともに増加します。しかしながら夜間頻尿は年齢以外にも様々な要因が関与する病態なのです。代表的な要因としては次の4つがあります。
①一日多尿:一日尿量が40ml/kg体重以上
②夜間多尿:夜間尿量/一日尿量が0.33以上(若年者0.2以上)
③膀胱畜尿障害:膀胱容量の低下
④睡眠障害
①は昼夜問わず一日中の尿量が多い場合です。とくに多いのは水利尿というものです。これは飲水量が多いために頻尿になる病態です。近年、健康志向ブームもあって飲水を促す情報は多いです。しかし過度の飲水は頻尿や心不全に繋がりますので私は患者様に一日飲水量を適正体重×25mlを目安量として指示しています。
②は昼間はあまりトイレに行かないのに夜間の尿のみ増加するパターンです。足のむくみや睡眠時無呼吸症候群の方に多く見られます。とくに足のむくみがある場合は夜間に仰向けになることで血液量が増加し尿量が増加します。また夜間睡眠中には尿を作らせないホルモン(ADH)が分泌するのですがこの作用不足でも起きることがあります。
③は前立腺肥大症や過活動膀胱などの泌尿器科疾患による膀胱容量機能の低下が背景にあります。
④は尿で起こされるというよりは入眠障害や中途覚醒、むずむず脚症候群などで寝れないために夜間トイレに行くという場合です。
そもそも人は睡眠で心身を回復させ自律神経のバランスを整えます。夜間頻尿で睡眠障害を来せば、それらを妨げることに繋がりQOLが著しく低下します。また夜間頻尿は転倒の発生要因にもなり、とくに大腿骨頚部骨折のリスクを増加させます。そういった結果から高齢者の生存率を低下させるという報告もあるのです。
「年齢だから仕方がない」と諦めているのではなく、何歳になっても良い睡眠を得るために夜間トイレでお悩みの際には受診をお勧めします。