前立腺肥大症とノコギリヤシの関係
中高年男性のおしっこのトラブルに対するサプリメントとして広告でよく目にするノコギリヤシ。今回はその効果と実態について書いていきたいと思います。
前立腺の肥大の仕組み
一般的に中高年男性になると前立腺が肥大化してきますが、これは前立腺細胞に男性ホルモン(テストステロン)が持続的に作用することで発生します。具体的には前立腺細胞内にある5α還元酵素がテストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)に代謝し、DHTが細胞核内のアンドロゲン受容体と結合することで前立腺の増殖へと誘導されて肥大化していくわけです。
ノコギリヤシの作用と臨床試験結果
ノコギリヤシは北米原産の低灌木で、その果実エキスは5α還元酵素阻害や抗アンドロゲン作用などを持つことがわかっています。そのため古くから前立腺肥大症のサプリメントとして使用されてきました。事実、ノコギリヤシの有効性が示された臨床試験は数多く認めます。しかしながらそれらの大部分は観察期間が短いものが多く、試験デザインなども統一されていないため、決して質の高い臨床試験ではありませんでした。その後に比較的質の高い臨床試験を集計して再度解析されました。これらの臨床試験をまとめた(2012年のコクランレビューとして出された)結果ではプラセボと比較してノコギリヤシの明らかな優越性は認められませんでした。
西洋薬や漢方薬との違い
前立腺肥大症治療薬に5α還元酵素阻害剤(製剤名:アボルブorデュタステリド)があることから、同じ作用を持つノコギリヤシの有効性が示されなかったことは不思議に思えます。同じサプリメントでもオリエンタルハーブ、いわゆる漢方薬では有効性を示せているものもあるだけに何とも残念ですね。
まとめ
この結果を踏まえれば、現状ではすべての排尿トラブルに効果的なサプリメントがあるとは言い難く、まずは泌尿器科へ受診し正確な診断をつけていただくのが無難だと思います。
本日は以上です。